日本には約413万社もの企業があります。しかし、そのうち約7割が赤字、毎年10,000社から15,000社の会社が倒産しています。また、業績は好調でも後継者がおらず、泣く泣く廃業したり、会社を他人に売り払う企業も存在します。実際、今や事業継承の問題は、日本の中小企業の1番の悩みとなっています。
冒頭のリストは経営者の悩みのトップ5です。一方で、順調に業績を上げ、毎年増収増益を続け、事業を拡大している企業があることも事実です。
では、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?
その秘密は“人”なのです。
想像してください。
・社員一人一人が経営者の意識を持ち、売上やコストに対して真剣に考えるようになったら…
・社員が言われたことだけをする“作業”ではなく、自ら考えて自発的に動く“仕事”をするようになったら…
・後輩を率先して指導し、優秀な人材を育成してくれたら…
全く違う未来が開けているとは思いませんか?
人が育っていないから業績が伸びず、資金繰りに困窮する。逆に言えば人が育っているからこそ、業績が上がってお金もついてくる。 しかし、先立つものがなければ、人材教育に時間もお金も割くことができませんし、教育しなければ人は育ちません。
かつて“経営の神様とまで言われた”実業家、松下幸之助氏はこう言っています。『事業は人なり』と。 「人使いの名人」とも呼ばれた松下幸之助氏は、企業を発展させるのは技術でも製品でもなく、人であることと説いています。
では、それを実現するために大切なこととは何でしょうか。
それはリーダーの『あり方』です。
端的な『やり方』を学んでも、そこにふさわしい『あり方』がなければ、いくら良い取り組みを真似したとしても、徒労に終わります。
ある事例を紹介しましょう。
徹底的に社員満足度を高めることによって、顧客満足度を高めることに成功し、毎年右肩上がりの業績を上げ、全国各地から視察に来るような企業に成長した会社があります。その会社では、毎年社員の誕生日に社長自らが筆を取り、誕生日の手紙を書いているそうです。
その話を聞いて同じことを実践した会社の経営者がいるのですが、結果、ますます社員に嫌われることになりました。「押し付けがましい」と。
この事例からわかることは、誕生日の手紙を書くことが重要ではなく、そもそもこの経営者と社員の関係性が悪かったことにあります。
この場合、まず社員と経営者の関係を改善しなければ、いくら付け焼き刃で手紙を書けば、「どこかから聞いてきたことをやって、ご機嫌伺いをしているだけでしょ」と、反感を買うだけです。なぜならこの経営者の『あり方』を、普段の言動から社員は見抜いているわけです。
この事例に限らず表面上取り繕っても、本質を見極め対処しない限り、何度でも同じような問題に見舞われます。
すべての経営課題を解決するには、リーダーにとって大切な本質を学び、『あり方』を変えることが必要です。それには内発的な気付きが不可欠です。
人は言われても言った通りに動きません。それは社員を見ればわかることです。
「もっと自発的に仕事をしろ!」
「モチベーション高く仕事に取り組め!」
「売上を上がるようなことを考えろ!」
そう言って、そのようにすぐにできた社員は果たして何人いますか?
まず、リーダー自身の内発的な気付きがあり、また同じように社員にとっても内発的気付きを促す、環境整備をすることがリーダーの役割なのです。そこで初めて人は育っていきます。